当院からのお知らせ
2021年秩父地域と新型コロナ(8)
西日本から例年に比べ1‐2週間早く桜前線が北上してきています。秩父の桜も今年は早めに咲きそうです!芝桜も楽しみですね。
昨日の秩父市は最高気温18℃、最低気温0℃でした。20℃近い寒暖差は全国的にも珍しく、厳しい気候です。こまめに温度調整をして風邪などひかないようにどうぞ気をつけてください。
私はいつもみなさんに注意を呼び掛けていますが、実は毎年ヒノキ花粉が飛び始めるころに花粉症が悪化してのどの痛みや咳が出るようになります。ここ数日とても鼻詰まりがひどく、夜間にのどの痛みで目が覚めてしまいます。今は声がガラガラになってしまいました。熱などはないものの、こんなご時世なので、念のため新型コロナの抗原検査・PCR検査も受けましたがもちろん陰性でした。こんな時にはなかなか特効薬もなく、自分の回復力とのど飴の力を信じて過ごしています。
さて、今日は秩父市の新型コロナ対策について書いてみたいと思います。以前から書いていますが秩父地域はこれまで、市中での大きな感染の拡大は起こっていません。2021年の年始は同時多発的に感染者がたくさん出ましたが、概ね家庭内で収束し、職場内・学校内・飲食店などでの大きなクラスターは起きませんでした。これは本当に住民のみなさん一人一人の努力の賜物です。都心部での匿名性というのが感染拡大の原因として取り上げられていますが、秩父の皆さんは地域のつながりが強い分、自分だけではなく家族や地域の人を守るという意識が強いと感じています。非常に誇らしい事だと思います。
同時に行政も地域での感染を抑えるために様々な対策をしています。秩父市は市長が医師ということもあり、全国に先駆けて様々な独自の事業が行われています。私は医療に関わるところしかわからないので、医療に関わる部分だけですが、その取り組みを取り上げてみます。
①感染防止用品3点セット配布
秩父市では市内全戸に電子体温計・消毒液・不織布マスクの配布が行われました。85%程度の配布がすでに終了している様です。新型コロナ流行初期のマスク不足は本当に深刻でした。我々医療機関も購入することができず、本当に困った時期はスタッフ用に50枚のマスクを4000円くらいで購入したこともありました。市からマスクが配布された頃には大分手に入りやすくなっていましたが、消耗品なのでありがたく、普段使い用に使わせていただきました。診療をしていても、配布された“out”と書かれたマスクをして来られる方をよく目にしました。一時は手作りマスクの方が多く、個性的でおしゃれだったので、それはそれでとても楽しかったのですが、最近は不織布マスクの方が予防効果が高いことも指摘されているので皆さんも助かっているかと思います。人と会話しない外出の時は布マスクでもいいと思いますが、人と会話する外出の時はなるべく不織布マスクをしてください。二重にするときは不織布マスクを下に布マスクを上に着けるようにしましょう。
体温測定する機会も増えました。毎朝出勤・通学前に検温をして下さっている方も、コロナ以前よりずっと増えています。朝の貴重な時間の中で体温計の順番待ちは大変なので、家庭に一本体温計が増えたのは良かったのではないでしょうか。私の家は診療所がすぐ近くなので、実は体温計を持っていませんでした。何となくあると安心です!大切に使おうと思っています。
マスクと手指消毒、日々の体調管理の重要性を啓蒙するという意味でも、3点セットの配布は良かったと思います。皆さんもマスク・手指消毒の徹底を引き続きお願いします。
②感染症検査費助成金
65歳以上の方、基礎疾患のある方に対しての自費でのPCR検査に補助金(最大2万円)を出すという事業です。重症化しやすいとされる方を守る為に開始されました。PCR検査は原則として新型コロナの感染が疑われる人、濃厚接触者と判断された人、接触アプリ(COCOA)で通知が来た人に対して行われます。その場合は公費での検査対象となり、自己負担はありません。しかし、それ以外でも仕事の都合や感染が心配な方などに対して、希望に応じて検査を行う場合があり、それは自費での検査となります。一般的にPCR検査は検査自体にかかる費用、検体搬送の費用、検体を扱うリスク管理にかかる費用などもあり、医療機関で行う場合は概ね25000円~30000円程度と高額です。その一部を市が助成してくれるという制度です。この検査は医療機関で行われる為、公費での検査と全く同じ精度の検査を受けることができます。
PCR検査は検査時点での感染の有無を確認するのに有用ですが、結果は絶対ではありません。また、適当にとりあえず一回やっておくというのは、検査翌日に感染する可能性もあるので意味がありません。検査の限界と目的を考えて受けることが大切です。市のホームページにも載っていますが、『息子や孫が帰省して接触したが、デイサービスなどを利用する前に検査を受けたい』『冠婚葬祭など、大勢の人が集まる機会があるため事前に検査を受けたい』『施設などに入所する前に一度検査を受けたい』などタイミングを見計らって検査をすると有用だと思います。
③PCR検査キット提供
現在秩父市では秩父市在住の方・秩父市勤務の方を対象に一人1000円でPCR検査を受けることができるという事業です。なるべく早く新型コロナ感染者を発見して拡大を防ぐために始められました。こちらは年齢や基礎疾患に関係なく対象になります。すでにキットの提供が開始されており多くの方に利用されている様です。自分で唾液をとって検体を郵送して検査に出し、[高リスク][低リスク]という形で結果が出ます。
こちらも②と同様ですが、とりあえず1000円ならやってみようというのはあまり有用ではありません。PCR検査は基本的にクラスターを予防することが目的です。高齢者施設のスタッフの方や病院のスタッフの方、訪問看護・介護スタッフの方などが感染拡大防止の為PCR検査を受けられると良いと思います。ただその場合は定期的に複数回受けられると良いです。
特にそれらの職業に該当しない方は『《1》冠婚葬祭などで人が集まる場所に行った後に感染していないか調べたい』『《2》久しぶりにおばあちゃんに会いに行く前に1回検査しておきたい』などの時に検査をすると良いと思います。《1》のようなあの時感染してしまったのではと心配な場合は、その日の4日後(翌日を1日後とします)~8日後に検査を受けると比較的有用です。《2》のような念のため事前に調べておきたい場合はその日のなるべく近い日(結果に2日ほどかかるので3‐4日前くらいに提出)が良いと思います。もちろん提出後の数日間に感染する可能性もあるので注意してください。いずれの場合も検査の精度の限界があるので、〔低リスク〕という結果でもいつも通りの感染予防は続けてください。※感染者に接触した可能性があって、かつ気になる症状が出た方は医療機関で相談しましょう。
④医療機関・薬局緊急特別支援金事業
医療機関や薬局は新型コロナの発生により、今までにない感染対策が必要となりました。当然の事ですが、新型コロナを含む、風邪症状の人が最も集まる場所です。発熱外来を新たに設置したり、オンライン診療の準備をしたり、施設内での患者さん同士の感染やスタッフへの感染などを防止する為に様々な対策を講じたりと対応に追われました。今後も継続して安全な医療が提供できるようにとのことで秩父市から支援金が支給され、感染対策に有効に活用されています。
⑤秩父市赤ちゃん・妊婦さん応援給付金
新型コロナの発生以降、出生した赤ちゃんや妊娠した妊婦さんを対象に応援給付金が支給されています。コロナ禍で生活が不安定になったり、周囲からの支援が受けにくくなったため、全国的に出生数は減少傾向にあります。そんな中で出産や妊娠をしているお母さんと赤ちゃんを支援する目的です。給付金だけでなく、先行きの不安が大きい中で行政が子育てを応援してくれているという意思が伝わる良い事業だと感じています。対象になる方は是非申請してください。医療と直接の関係はありませんが、私は秩父地域の子育てを応援したいと思っているので取り上げてみました。
⑥新型コロナワクチンの『秩父方式』
新型コロナワクチンの接種が開始されようとしています。テレビなどでもよく取り上げられていますが、秩父地域は秩父市・横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町が一体となって、どこの地域の人がどこの地域の接種会場でもワクチン接種が受けられるように準備が進められています。これは元々市町をまたいでかかりつけを持っている秩父地域にとってはとても良いシステムです。一方でおそらく市や町の職員の方たちからすると、非常に業務が複雑になり大変なことだと思います。地域の皆さんの為に手間を惜しまず『秩父方式』を実現しようとしてくださっている行政の方たちには本当に感謝しています。今後のワクチン事業には行政と医師会の連携が非常に大事になってくるので協力して頑張っていきます。
市報などでご存じの方が多かったと思いますが、上記の通り秩父市では新型コロナ対策としてたくさんの事業が行われています。使い方次第でどれもコロナを乗り越えるためにとても有用な事業です。
これらの事業も上手く利用して、引き続き秩父で安心して生活できるように活かしていただければと思います。
引き続き秩父地域をみんなで守っていきましょう。
秩父地域の医療の特徴の一つとして、行政との連携の良さがあります。これは秩父市だけではなく横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町とも良好な連携をしています。秩父の三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)の幹部と、一市四町の首長、各市町の医療対策などの部署の担当者が定期的に秩父地域の医療について話し合いを持っています。このような三師会と行政が緊密に連携することは当たり前の事の様ですが、実は他の地域ではなかなか見られないことです。秩父地域は限られた医療資源を最大限に活かすために“秩父の医療は一つ”のスローガンの下に協力して一緒に頑張っています。
私は秩父市役所の産業医もしていますが、コロナ禍の行政の仕事は本当に大変です。目まぐるしく変わる感染状況と国の方針に振り回され、様々な国や県の事業を実行しつつ、市独自の事業も考え・実行して、我々市民のくらしを守るために頑張って頂いています。時には時間外労働が多すぎて産業医の私に休みを取るように注意を受けている方もいる状況です(もちろんやむを得ない残業なのですが)。
行政の皆さん・保健センターの皆さんには引き続き体に気をつけて、医師会と共に頑張っていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
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