当院からのお知らせ
小児感染症の大きな波が続いています。
全国的に小児の感染症の大きな波が続いています。小児感染症の急増で、全国の小児科外来はどこも混雑、入院病床もギリギリという状況が続いているようです。元々小児科外来は流行に大きく左右される為、医療機関の混雑具合にも波があります。しかし、今回の5月中旬以降続いている大きな波は、複数の病気が混在していて、流行期間も長いという特徴があります。この波もいずれ落ち着くと思いますが、現時点で秩父地域でも、小児科を受診しにくい、入院が必要と思われるこどもさんもなかなか入院先が見つからない状況になっています。当院の様な小児科専門でない医療機関も、ずっと小児の風邪症状が多い状況が続いています。これからちょうどお祭りや夏休み、プールなどのシーズンでこども達にとっては楽しい貴重な時期でもありますが、体調管理にもご注意ください。
保育園や幼稚園は子どもたちの集団生活の場です。これまで集団生活をしていなかったこどもさんが入園すると、多くの感染症にさらされ、毎週のように熱が出ます。せっかく入園したのに、最初の頃はほとんど通えないこどもさんもいます。保護者の中には「子どもに負担がかかっているのでは」と悩まれたり、「こんなに何度も風邪を引いて、生まれ持って免疫が弱い病気が隠れていたりするのでは」と不安になったりする方もいるかもしれませんが、これは一般的によくあることです。コロナ禍の感染症対策によって、すでに集団生活を始めていたこどもさん達も感染症にかかる機会が減少していました。その影響で、今は乳幼児が一斉に感染症にかかりやすい状況になっています。流行っている病気の種類も多い為、繰り返し風邪を引いてしまうこどもさんもたくさんいます。手洗いなどの基本的な感染対策と、日頃の体調管理をよろしくお願いします。
秩父地域でも最近はRS感染症が多くなっています。RS感染症は小児の風邪の中では特に重症度が高く、注意が必要です。RS感染症の特徴を少し書いてみます。
【RS感染症】
RS感染症はもともと冬場に流行する『冬の風邪』の代表格です。しかし、近年では季節性が乏しくなり、夏場にも流行が見られるようになっています。今年は5月中旬頃から全国的に流行が始まり、近年にない大流行になってきています。
RSウイルス感染症は1歳までに7割、2歳までにほぼすべての子どもが1回はかかるという、感染症の原因としてとても多いウイルスです。『はじめての感染』では症状が悪化することが多いのですが、繰り返しかかるうちに、だんだん症状が軽くなっていくことが知られています。『はじめての感染』では10人に4人程度は咳症状が重く気管支炎や肺炎になり、10人に1人くらいは入院が必要になると言われています。また、小さいこどもさんの場合は中耳炎の合併も多いと言われています。
特に生後6か月未満であると重症化のリスクがあります。小さい赤ちゃんの場合は特に急激な悪化に注意が必要です。最近では2歳くらいまではかなり重症になってしまう印象があり、『はじめての感染』が遅くなっているのかもしれません。逆に3歳以上のこどもさんは多くの場合『はじめての感染』を経験しています。2回目以降は入院するほどの重篤化は少なくなっていきます。
【RSの典型的な経過】
症状はまず発熱・鼻汁からはじまることが多く、2~3日続きます。このままひどくならずに回復することも多いですが、一部の子に4~5日目くらいから気道症状の悪化、すなわち咳や喘鳴(ぜいぜい、ひゅーひゅーとした呼吸)、努力呼吸、多呼吸(呼吸が速くなる)などの症状が出てきます。呼吸数が40回を超えると速くなりはじめている、そして60回をこえるととても速いと考えます。(15秒間の呼吸数を数えて×4で考えてください)そして、息を吸うときに胸骨や鎖骨の上の陥没(凹む)などがあるかなど呼吸の状態を確認します。呼吸状態が悪いと感じた場合は早めに医療機関に相談しましょう。発熱も5日程度持続することが多く、長いと7日間程度持続します。5日間以上持続する場合は中耳炎や気管支炎を起こしている場合もあります。医療機関に相談しましょう。
【RS感染症の治療】
RSウイルスに効く特効薬はありません。また症状に対しても特別な治療があるわけではありません。咳止めや解熱剤などで辛い症状を極力軽減しつつ、回復を待つしかありません。鼻水が多くて辛いことがあるので、可能であれば鼻水を吸引してあげることは有効です。風邪をひきやすいこどもさんの場合は電動の鼻吸引があると便利です。咳症状に対しては咳止めの薬以外にも、加湿をしてあげたり、はちみつを少量なめさせたり(1歳未満ははちみつはだめです)、ヴェポラップを胸に塗ってあげることも有効です。体を起こし気味にしている方が楽なので、少し上体を起こして寝かせてあげるようにしましょう。
登園は解熱して、全身状態が良く症状が改善していれば可能になります。ただ、咳症状が強い間は周りの子にうつしてしまう可能性は高いため、今の様な流行期は少し余裕を持って咳が落ち着いてきてから登園するように心がけてください。
RSウイルス感染症はこどもの風邪の中では症状が重く、夜も眠れなくなってしまうため、看病している家族もとても大変です。大人は通常重症になりませんが、疲労がたまっていたりするとそれなりに体調が悪化してしまう場合もあります。家族みんなでしっかり休養を取りつつ、お大事にしてください。
小児感染症の波はまだしばらく続きそうですが、感染症の流行が一周すると落ち着いてくるのではないかと思います。こども達が健やかに過ごせる様、地域全体で気をつけていきましょう。
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